2025/08/03

セリフ集:アーキテクトと生きた金庫

ローグレガシー2の一回限りのセリフ集です。
汎用セリフや日記、記憶の断片などの何度でも聞ける(読める)セリフは省略しています。
金色の扉以降のセリフはさすがに自力で見てください。




アーキテクトのノア
 おやおや、これはこれは。
 若者よぉ、ごきげんよう! ワシと話しに来たのかね? この老人とぉ?

 年寄りを邪険にしないのは、いい心がけだ。
 ワシらは、若者と分かち合える知恵をたーっぷり持っとるからな。
 いろーんな物語も知っとるぞう。

 こりゃこりゃ、ワシとしたことが、つい先走ってしまった。自己紹介すらしとらんかったわい!

 ワシの名前は、「じいちゃん」。特性は、年寄りだ! お前さんのことは……
 「若者」と呼ぶことにしよう。だってお前さんの特性は、過去がないことだからなぁ。

 だが、それについてはワシがどうにかしてやれるぞ。
 お前さんが、喉から手が出そうなほど欲しがっとる、成果というやつを得る手助けをしてやれる。

 このドリルが見えるか?
 これを使ってダンジョンを固定すれば、あちこち入れ替わるのを防ぐことができるんだ。

 そうすれば、これまで調べられなかったところも隅々まで見て回れるようになるし、
 倒せなかった敵に再び挑むこともできる。英雄になって、自分の物語を作り放題だぞぉ!

 もちろん、ドリルを使うには、じいちゃんの探知手数料がいるがな。

 何でタダでやってくれないんだって? だって、ワシはじいちゃんだからだぁ。
 おバカちゃんでも、太っ腹ちゃんでもない。




生きた金庫のアッティコス
 おーい…… おぉーい!
 やあ、友よ。こっちだ。

 ボクだよ、君の友人の、生きた金庫さ。
 君がここに来たのは、アレが欲しいからなんだろう?
 だって、君、ボクなら提供してあげられるからね。

 ボクが言ってるのは、税金の抜け穴のことさ。
 まったくまったく、ボクはね、抜け穴の中の抜け穴の、穴という穴を知り尽くしてるんだ。

 会計士のボクがちょっと魔法を使えば、死神からゴールドを引き出すことだってお安いご用さ。

 友よ、それが財テクの秘訣だよ。
 どんだけ金を稼ぐかじゃなく、どれだけキープするかが重要なんだ。
 で、もちろん、ボクたちはぜーんぶキープする。

 もしくは、少なくとも数パーセントね。



アーキテクトのノア
 若者よぉ、ワシの話を聞きに戻ってきたのかね?
 ワシは昔は吟遊詩人でな、寓話か実話かを問わず、さまざまな物語を語ったもんだぁ。

 有名だったんだぞぉ! 大陸の隅々にまで知れ渡っとった。
 「最悪な話を聞かせるヤツ」ってな。

 才能はなかったかもしれんが、有名人だったのは確かだぞぉ!


生きた金庫のアッティコス
 おーい!
 友よ、こっち、こっち。ボクだよ、生きた金庫さ!
 ……まさかボクが生きてるなんて、思いもしなかったんだろ?
 いいってことよ、ボクは、その気になればものすごく静かにできるからね。

 ただ、君の「投資」はどんな具合かなって思っただけさ。
 うまくいってる? 十分な見返りは得られてる?

 へええええ…… それならプロに任せてくれよ!

 金額が増えることほど気分がいいものはない。そうだろ?

 スリル満点なことが好きな人もいれば、慈善事業から喜びを得る人もいる。
 けど僕はね、数字が上がっていくのを見ると、キタキタ~って思うね!

 ボクに任してくれ、友よ…… しっかりやるからさ!


生きた金庫のアッティコス
 おーい!
 なあ、友よ。いくつか助言してやろうか?

 今いくら貯まってるかなんて、気にしすぎる必要はない。
 今は上げ相場なんだ。金を作るには、じゃんじゃん使わないと。

 君の屋敷をアップグレードしてくれよ。ボクに投資する前に、君自身に投資するのさ。
 ワケ分かんない? けど、これが金儲けの必勝法なんだ。ホントさ!


アーキテクトのノア
 若者よぉ、賢いキツネの話をしてやろう。

 昔々あるところに、キツネがおった。賢いキツネだ。
 そこには、農夫もおった。賢い農夫だ。

 賢いキツネは、賢い農夫の納屋に何度となく忍び込んでは、
 そこで飼育されていた賢いニワトリを食い荒らした。

 分かるかね、ニワトリも賢かったんだ。ただ、食われないようにするほど賢くはなかった。
 それに、この物語に大きくかかわるほど賢くもない。

 とにかく、ある日、賢い農夫はもう我慢ならんと思い、
 賢いキツネを捕まえるために賢い罠を仕掛けた。

 彼は賢いニワトリを賢い家の中に入れると、
 賢いキツネを捕まえるべく、賢い納屋の中に身を潜めた。

 その夜、ゆーっくり賢い納屋の中に侵入した賢いキツネは、そこで賢い農夫と鉢合わせた。
 エサにするはずだった賢いニワトリがいないため、
 賢いキツネは、賢い農夫を代わりに食べてしまった。

 おしまーい。

 このお話の教訓はな、いくら「賢い」とつけようと賢くなるわけじゃないってことだ。

 ……それにな、あまりに賢い賢い言いすぎたもんで、
 それがどんな意味だったかも忘れてしまったわい。


生きた金庫のアッティコス
 やあ、友よ。浮き輪を変えようか考えてたんだ。だってこれ、古くさいだろ?
 ボクの装飾とあまり釣り合ってない気がしないか?

 格調がないというかさ。

 星とか金貨とかの飾り付けがしてあるものなんか、いいよな。

 ダイヤモンドとか王冠もいいな……

 いや、でもなあ。

 話せば話すほど、この浮き輪に愛着がわいてきたよ。


生きた金庫のアッティコス
 友よ、ボクだってね、投資のことばかり考えてたわけじゃないんだ。
 親だったこともある。まあ、ふつうの父親さ。

 生まれたばかりの息子が、とにかくシワシワだったのを覚えているよ。
 赤ちゃんってのは、かわいくてスベスベしてて、適応性があるものだと思ってたのに。

 ……ボクの子ときたら、日光で干からびたレーズンみたいだったよ。


アーキテクトのノア
 良い話ってのは、不変だ。この王国には、良い話がひとつもない。
 これはどうにかしたほうがいいぞぉ、若者よ。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、ウサギとカメの話は聞いたことあるか?

 昔々あるところに、ウサギとカメがおった。

 ウサギは速足カメと呼ばれており……
 カメは速足ウサギと呼ばれておった。

 速足ウサギのカメは、ものすごーく遅かった。しかも、とーんでもない年寄りだった。

 ……そりゃもう、とーんでもなくな。

 速足カメのウサギの方も、とーんでもない年寄りで、ものすごーく遅かった。

 ……そりゃもう、ものすごーくな。

 ある日、ウサギのカメとカメのウサギは外に出かけた。
 どちらもすさまじーく遅くて年寄りなもんで、ふたりはこれまで顔を合わせたことがなかった。

 すみかも近くではなかったしな。

 やがて、ウサギのカメはとーんでもなく老いてこの世を去った。
 数年後、カメのウサギもとーんでもなく老いてこの世を去った。

 おしまーい。

 このお話の教訓はな、加齢に勝てるものなどおらんということだ。

 ……ワシも、老い先短い身だよぉ。


アーキテクトのノア
 長年の人生でワシが学んだことがひとつあるとすればなぁぁ……
 それは、この世には運と才能ってものがあるということだ。
 その内のひとつだけ選べるとしたら、必ず運を選ぶんだぞぉ。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、お前さんはピザを食べたことがあるか?

 ありゃ、うまいぞぉぉ!
 マリアが一切れくれたから、お返しをしようと思ってな。
 物語を語って楽しませたのだが、それ以来避けられとるのだ!


生きた金庫のアッティコス
 レディ・キンマネのことだけど。
 助言をあげたり技を教えたりして君の手助けをしてるのに、一度も報酬をもらってないよな?
 今は必要ないのかもしれないけど、あの子だっていつかは金が必要になる日が来る。

 ……キンマネは自分で言いはしないだろうから、君から得た金でやってる副次的投資から、
 こっそり金をためてるのさ。

 だから、もっと金を稼いでくれよな! 君は、自分が思うより多くの人たちを助けてるんだから。


生きた金庫のアッティコス
 息子が小さかった時、よく物語を聞かせてやったよ。
 困ったのは、ボクの父親がそんなことを全くしない人だったから、
 話しながら筋を考えなきゃならなかったことさ。

 即興で作った話と、どこかで聞いたことのある話をまぜこぜにしたりね。

 ボクは作家じゃないから、しょうもない話ばっかだったけど、
 息子はいつもボクが作る話の方を好んでくれたよ。

 ボクが作ったってことを知っていたからかもしれない……

 もしくは、文学的センスが悪いのか。どっちなんだろうね。
 でも、話を作るのは楽しかったよ。


アーキテクトのノア
 若い頃、ワシは色んな仕事に就いたぞぉ、若者よ。
 ウェイターや吟遊詩人をやったり、宿屋の経営者や、帳簿係や、養蜂係や、カギの保管係……
 とにかく、色んな係をやったもんだ。

 何をやっても下手っぴだったもんで、いろーんな仕事を転々としたなぁ。

 そんなんだから貧しく老いさらばえて死ぬはずだったんだろうが、
 ある日、釣りをしておると宝箱を釣り上げたんだ!

 中には赤エーテルがどっさり入っておった! そりゃもう、あふれんばかりにな!

 ほんの数個摂取しただけなのに、ワシはあれからまったく年を取っておらんのだ!

 ワシの長年の信条はな、運とは分かち合うものだということだ。
 だから、ワシは世界旅行に出て、発見した赤エーテルを全部人に譲った。

 最後のひとつを譲ってからもうかなり経つが、もし今も持っておったんなら、
 喜んでお前さんに渡したのだがなぁ。

 幸運は分かち合うものだし、お前さんには可能な限り多くの運が必要なようだしな。

 ……そういやあ、今考えてみれば、ワシはこれまでの人生で実に多くの宝箱を発見してきた。

 ワシはまったく果報者だなぁ!

 このドリルだって、どぶの中で見つけたんだぞぉ!


生きた金庫のアッティコス
 家族のためにもっと金を稼ぎたかったから、家を出て銀行で働き始めたんだ。
 銀行業はどうだったかって? 友よ、ボクは夢中になったよ。ろりゃもう、どっぷりね。

 帳簿を黒字にして、数字がぐんぐん上がって行くのを見るのが爽快でね!

 すっかり取りつかれて、何年もそこで過ごしたよ。
 家族のことが眼中になくなってしまった。

 けど、金なんて所詮は目的達成の一手段に過ぎないんだよ、友よ。ボクは目がくらんでいたのさ。
 だって、よーく見てくれよ! 金が好きすぎて、自分を金庫にしちゃったんだぞ!

 まあ、なんだ……
 今だって金庫でいるのを楽しんでるけど、ちょっとやりすぎたかなとは思うんだ。

 浮世を漂うさすらいの金庫、なんてな、今のは単なる浮き輪ジョークさ。

 けどホントの話、金庫でいるのは気に入ってるんだよ!


生きた金庫のアッティコス
 どれくらい銀行で働いたかは分からないけど、
 ようやく故郷に戻ると、妻は年取ってたし、息子はいっちょ前の男になっててさ。

 合わせる顔がなかったよ。いたたまれない気持ちだった。

 けど、埋め合わせをしなきゃならないってことは分かってたから、
 街に戻って、仕事を辞めたんだ。自助グループにも入った。
 金の魅力ってとてつもないからさ、サポートが必要だってのが分かってたんだ。

 ……けど、ひとこと言わせてくれよ。
 金を稼ぎすぎてるのが悩みっていう人たちが集まるグループに参加するのは、体裁が悪かったよ!


アーキテクトのノア
 ごきげんよう、若者よ。毎日こーんな天気ならいいと思わんかね?
 お望みなら、固定して差し上げるぞぉ。

 いやいや、待て待て。それはできん。
 ワシには、天気の固定など無理だ。

 ……少なくとも、今のところはな!

 いや、待てよ、ここではいつだって同じ天気じゃないか。

 今のは忘れてくれぃ!


生きた金庫のアッティコス
 あのじいさんがアーキテクトって呼ばれてるのは、趣味の悪い話を語るせいではないよ。

 ……変なドリルを持ってるせいでもない。

 あの人はね、プレハブハウスを考案したんだよ。
 プレハブハウスっていうのは、部屋の形から壁の高さ、ドアの配置、それに下水にいたるまで、
 あらゆる要素を標準化したものさ!

 君が建ててる屋敷があるだろ? あれだって、ほぼすべて、あの人のプレハブハウスをアレンジしたもの
 でできてるんだよ。

 あのじいさんがプレハブハウスを設計したそもそもの理由は
 ちゃっちゃと建てられる家を作って、貧しい人たちを助けるためさ。
 部屋の大きさや形が常に同じなら、必要な建築資材だって大量生産できるし、
 取り付け方をみんなに教えるのだって簡単だろう?

 プレハブハウスを使う人が増えれば増えるほど、その設計がより定着していくのさ。

 王はプレハブハウスの利点に気づいて、すぐに将来的な建築の標準規格にしたんだ。

 地転が発生し始めたことを考えれば、そうしたのは正しい判断だったみたいだね。
 つまりね、似たような形や大きさの部屋がそこらじゅうにわんさかあるのは、
 アーキテクトのおかげってわけさ。

 あの人は、アイデアを独占して住宅市場帝国を築き上げることだってできたのに、
 全部タダであげちゃったんだよ。
 ……あそこまで無私な篤志家を見ると、まったく度肝を抜かれるよ。


生きた金庫のアッティコス
 ボクはね、首都で資産を全部売却するのに、あまりにも時間をかけすぎてしまったんだ。
 故郷に戻ると、妻はもう死んでいたし、息子は村にいなかった。

 旅人として放浪生活を送っていた息子を見つけるのは、大変だったよ。
 街から街へと移って、あちこちで雑用をこなしていたからね。
 遠くから息子の後を追って、様子を見守ったんだ。

 父親と同じように成功している姿を見たかったからね!

 まあ、全然成功してなかったけどさ。どんな仕事をしようと、失敗ばかりしていた。
 こっそりお金をあげたりもしたんだよ――時々、あの子の持ち物に金を忍ばせてね。

 でもまったく理解不能なことに、そのたびにあの子は金を他人にやってた。
 もう、イライラしたよ!

 金融業界では、そういうのを…… 時価総額の下落…… あれ?

 おいおいおい、このボクが、金融用語を忘れつつあるのか!?


アーキテクトのノア
 若者よぉ、賢いゾウの話をしてやろう。

 昔々あるところに、ゾウがおった。賢いゾウだ。
 そこには、サーカスの調教師もおった。賢い調教師だ。

 賢いゾウは、賢い調教師のテントに何度となく忍び込んでは、
 そこにあった賢いピーナツを食い荒らした。

 非常に賢いピーナツをだ。

 ある日、賢い調教師はもう我慢ならんと思った。
 彼は賢いピーナツを賢い家の中に入れると、賢いゾウを捕まえるべく、
 賢いテントの中に身を潜めた。

 その夜、賢いテントの中に侵入した賢いゾウは、そこで賢い調教師に見つかった。
 そこで賢いゾウは、賢い調教師を代わりに食べてしまった。

 おしまーい。

 このお話の教訓はなぁ、設定を変えるだけでまったく新しい物語ができることもあるってことだ。

 ……いつか、また別の話を聞かせてやるぞ、若者よ。賢いサルの話だ。

 ……新たな設定は手に汗握るものになっておるから、楽しみにしててくれぃ!


アーキテクトのノア
 若者よぉ、生きた金庫と話したことはあるかね?
 彼は、ワシのゴールドの管理を手伝ってくれとるんだ。

 ワシは金のやりくりが大の苦手でなぁ、破産しないように助けてくれとる。
 まったく、実に親切な金庫だな。


生きた金庫のアッティコス
 ボクはね、老いつつある息子を放っておけなかったよ。
 だから、残りの持ち金をすべてはたいて十分な量の赤エーテルを買ったんだ。
 息子があと百倍は長生きするようにね。

 それを、絶対にあの子が見つけるところに隠しておいた。
 あの子はボクの血を引いてるんだから、優秀に決まってる。

 ……その優秀さを活かしきるのに、もうちょっと時間が必要なだけだったんだ。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、ちっちゃなネズミの話をしてやったことはあるかね?

 昔々あるところに、ちっちゃなネズミがおった。
 ある時そのネズミは、網に引っかかったライオンに出くわした。
 網から逃れるのを手伝って欲しいとライオンは頼んだが、
 ネズミは自由になったライオンに食われてしまうことを恐れた。

 食べたりしないとライオンが約束したので、ネズミは網をかじり始めた。
 もうちょっとで網から逃れられるというとき、
 ライオンは哀れなネズミに襲い掛かり、食ってしまった。

 しかしネズミは網を完全には嚙み切っていなかったため、
 ライオンは網から自由になることができなかった。
 そうして何日も何日も網に捕われたままのライオンのもとに、
 ある日、前よりも大きなネズミがやってきた。

 ライオンは網をかみ切って自由の身にしてくれるよう大きなネズミに頼んだが、
 その代わりにネズミはライオンを食ってしまった。

 このお話の教訓はなぁ、この世は食うか食われるかだってことだ。
 それに、性悪な奴はみんなに嫌われるということだな。

 この話を聞いた誰もが、ライオンに食われた小さなネズミに同情し、
 ライオンが当然の報いを受けると大喜びしたものだ。

 ……お前さんも、いつの日か食われるだろう。

 その時に、人々が喝采しないような生き方をするのだぞぉぉ。


生きた金庫のアッティコス
 やあ、友よ。リッチな気分かい? だって、見たところすごくリッチそうだよ!

 ……君ってリッチだったっけ? うーん。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、話はもうあまり残っておらん。
 言ったろぉ、ワシはつまらん語り手だって。


生きた金庫のアッティコス
 赤エーテルをすべて与えた時、息子に何かあげるのはこれが最後だと心に決めたんだ。

 必ずやり通すことがボクにもひとつあるとすれば、それは約束を守ることだ。
 だからこそ、顧客はボクを信用して金を預けるんだからね。

 ……けどね、息子ときたら…… その赤エーテルも全部人にあげちゃったんだよ。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、賢いサルの話をしてやろう。

 昔々あるところに、サルがおった。賢いサルだ。
 そこには、サーカスの調教師もおった。賢い調教師だ。

 賢いサルは、賢い調教師のテントに何度となく忍び込んでは、
 そこにあった賢いバナナを食い荒らした。

 非常に賢いピーナツをだ。いや…… バナナをな。

 ある日、賢い調教師はもう我慢ならんと思った。
 彼は賢いバナナを賢い家の中に入れると、
 賢いサルを捕まえるべく、賢いテントの中に身を潜めた。

 その夜、賢いテントの中に侵入した賢いサルは、そこで賢い調教師に食われてしまった。

 おしまーい。

 このお話の教訓はな、同じことを何度も何度もやってれば、いずれ捕まってしまうってことだ。

 ……それに、この物語の結末が本当はどんなだったか、忘れてしまったからなぁぁ。


アーキテクトのノア
 吟遊詩人をやってた頃、ワシの物語を楽しんでくれる者など皆無だった。
 ワシの話は常に既知のものとはちぃぃと違っとったからな。

 観衆は騙されたような気がしたんだろうなぁ。
 ワシは皆に新しいものを聞かせてやろうとしたんだが、彼らは慣れ親しんだものを聞きたがった。

 反復にはぬくもりがある。慣れたものからは安らぎを感じられるんだ。
 だが、未知の領域に乗り出してこそ、進化が得られる!

 個性には美があるんだ、若者よぉ。

 お前さんが自分の個性を見つけたら、その時にはその重要性を理解するだろう。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、たった今気づいたんだが、ワシのドリルには画面が搭載されておる……
 この妙なからくりは、この世界のものではないような気がするんだがなぁぁ。


生きた金庫のアッティコス
 ボクはずっとね、息子のことを無能だと思ってたんだ。
 金も稼げず仕事も長続きしない、ちょっとガッカリな奴だってね。

 父親と同じように成功して、裕福な人生を送ってほしかったんだよ。
 だけど、ボクはただ自分の過ちを覆い隠そうとしていただけだった。
 ボクはね、家族のもとを去るべきじゃなかったんだ。

 金は麻薬みたいなものさ。いくらあっても、もっともっと欲しくなるんだ。


アーキテクトのノア
 アトスがなぁ、ワシのメガネを直してくれたんだ。
 あやつがガラス吹き工でもあったとは、知らなんだ。
 ワシと一緒で、あやつも長年の間に色んな技術を身に付けたんだな。

 ……ワシと違って、それらの技術に秀でておるしなぁ。


生きた金庫のアッティコス
 やがて息子は、自分の特技を見つけたよ。
 実はあの子には、建築の才能があったんだ。

 皮肉だよ。豊かな才能があるのに、そこからまったく金を得ようとしなかったんだから。

 友よ、ボクは息子を愛している。
 優しくて寛大で、あの子の近くにいるとボクもいい奴になれる。
 息子からいくつも人生の教訓を学んだおかげで、
 (君のような)金に無知な貧乏人に手を差し伸べるまでになったんだ。

 ようやく、ボクも有意義な人生を送っている気がしているよ。


アーキテクトのノア
 子供の頃、ワシの父も物語を語ってくれてな。
 ものすごーく面倒くさがりな人だったから、
 本を買いに行く代わりに、記憶を頼りに暗唱してくれたんだ。

 細かい設定は変わるし、大筋も変わるし、時には教訓まで変わった。

 だからこそ、口承とはかくも素晴らしいものなんだよ、若者よぉぉ。
 物語も、ワシら同様に変わっていくんだ。

 紙に書かれた物語は、変えることができない。
 これはタイムカプセルと同じで、現在の姿ではなく当時の面影のみを見せるものなんだなぁ。

 ……で、それこそがこの話の教訓だ。

 かけがえのない「お前さん」とはな、今現在の「お前さん」だけなのだ。

 おしまーい。

 ……

 ……お前さん、何でまだここにおるんだぁ?


生きた金庫のアッティコス
 ……フンガァ?

 ごめんごめん。日差しのせいで、つい眠りこけてしまった。何か用かな?


アーキテクトのノア
 話はもう底をついたぞぉ、若者よ。
 泉がからっからでな…… 今のところは。

 まぁ言い換えれば、もうちょっとしたらまた潤うかもってことだ。


アーキテクトのノア
 ごきげんよう、若者よぉ。

 昼は長く、夜は消え失せ、ワシらは永遠に生き続けるだろう!


生きた金庫のアッティコス
 ここから出たら、息子に自分の正体を明かそうと思っているんだ。

 あの頃何も言わなかったボクは、バカだった。
 ましてや、未だに何も言っていないなんて、愚かにもほどがある。

 ……これまで話を聞いてくれて、ありがとう。
 話せる相手がいたおかげで、ずいぶん救われたよ。


アーキテクトのノア
 若者よぉ、これまでの旅で、ワシは特殊な鉱物をたくさん集めたんだ。

 この石を見てくれぃ。
 ソウルストーンと呼ばれておってな、これらはまさに冒険の縮図と言ってもいいだろう!

 ワシはもうすでに冒険を卒業しておるが、お前さんはまだまだやれる。
 これを受け取って、お前さんが見つけた冒険をワシと共有しておくれ。

 そうすれば、それらの物語をわんさか吸収して、ワシのものとして語れるだろう?


生きた金庫のアッティコス
 友よ、今日はどうかしたかい?


生きた金庫のアッティコス
 やあ。君のおかげで、商売が大繁盛してるって知ってたかい? ホントだよ!

 ここでは、新たな顧客を獲得するのが難しかった。
 たぶん、経済的失敗の化身みたいなやつと話すのは、心地のいいことじゃないからだろう。

 たとえその化身が、浮き輪の上で大人しくプカプカ浮いてるだけでもね!

 だけど、君との会話が人々の警戒心を解いたのさ!

 君が話してるのを見て、ボクが話してるのを見て、やがてみんなが話し始めたんだ。

 とにかく、君に成功の分け前を与えないんじゃスッキリしないからさ、これを受け取ってくれ。
 長年の間に集めたソウルストーンを、君にあげるよ。

 賢く使ってくれよな、友よ……
 ……目ざとい買い手にとっては、ゴールドよりも価値があるものなんだから……

 ………

 ……ところで、目ざとい買い手っていうのは、時空漂流の館にいる子たちのことさ。
 ボクは、何でこんなあいまいな言い方をしてるんだろうね。

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